第11章 前進
あれから数カ月後もう季節は夏だった
(うわ〜……暑いな本当に)
日差しがじりじりと照りつけていて体が熱いし汗も服にベタベタと染み付いて気持ち悪い
けれど時たま流れる涼やかな風は心地よかった
私は鶴の湯の玄関から水を撒いていると
[ちゃん〜今日も暑いねぇ]
いつもの常連さんに声をかけられる
[そうですねぇ〜]
[あんま無理しないでね〜]
[ありがとうございます〜!]
私は無事仕事に復帰した
最初は数時間だったけど今はフルに戻している
体が鈍っていたのか戻すのが大変だったけど今ではそれが嘘かのように
(体が軽いような気がする)
前よりも調子がよくて驚くほどだ
あんなにうなされたり、落ち込みが激しかったりしていたのにそれが少なくなって精神的に安定した気がする
先生にも頑張ってるねと褒められるほど良くなったらしい
(でもまぁ…)
おじいちゃんとおばあちゃんからはあまり無理するなと言われている油断するなということなんだろうけど
兎にも角にもここまで良くなったのは間違いなく条くんのおかげだ
(彼がいたから)
あの時聞いてくれたから寄り添ってくれたから
今の私があるんだって
(ありがたいことだな…)
そう思っていると
[ちゃん〜]
噂をすればだ