第28章 番外編② 御礼
[梶蓮Side]
そう呟きまた頭を撫でる
今度は両手で犬でも撫でるかのようにわしゃわしゃと
(……………初めてだ)
俺の行為が嫌でなかった 受け入れてくれた
そんな女に出会えたことに
(………ってあ)
その事実嬉しかったのかの髪がぐちゃぐちゃになってしまっているかなり自分でも舞い上がっていたようだ
だがそれも彼女は大して怒らずもうなどと思わず笑みが溢れる
(……名残惜しいが)
いつまでもここにはいられない
こいつのそばにいたい
叶うならずっと
何故か笑顔を見た時からその気持ちが溢れそうになっている
たがそろそろいい加減桃も冷蔵庫にも入れなきゃいけないし
楠見達にも桃がいるか聞かなくては
(…………離れたくないな)
自分でもこんな気持ちは初めてに近い
柊さんとはまた違うように感じる
まるでこれは
(……………っまぁいい)
後でも分かることだ
敬語早く直せと小言を言いヘッドフォンを装着し帰るため歩む
(……あ)
少しヘッドフォンの音が大きい
スマホの音楽の音量を減らしている時
[またね………!梶さん…!]
と声がする
まさかあいつからかどこまで律儀なんだ
なんだかこのまま帰るのも忍びなく振り返る
(………………やっぱり)
俺を見た瞬間驚きの表情を浮かべるももう大丈夫だそういう意味も込めてひらりと手を振り歩き始める
駄目だ
嬉しくて口角が上がりっぱなしだアイツがいたかと思うとやっぱりおかしくなる 体が高揚とする感覚
これは
(…………俺)
もしかして好きなのか
のこと
楠見達に聞くよりも前に思いを自覚する
こんな思いを抱くなんて
(……………俺……)
(本当………なのか…)
自分でも信じられない
こんなの初めてだ
どうしたものか悶々としながら歩くしかなかったのだった