第28章 番外編② 御礼
[梶蓮Side]
頭を上げて何を言うかと思えばありがとうございますだ
しかも優しいのおまけつき
(なんで)
俺に御礼を言うんだろうか大したことを言ったつもりはないしむしろ伝わらないかと思っていたのに
不思議だ
女に対してこういう事をあまり思ったことがないまずそもそも関わる機会すらもないからかもしれないが
けどそれと同時にこいつからそう言った返答を貰ったことでむしろホッとしている自分がいた
言いたいことは伝わったようで安堵する
誤解されずよかったと
(……だが)
敬語が気に食わねぇ
どうやら年は俺より上のようだし別にそこまでへこへこしなくてもいいんじゃねぇのか
まぁなんとなくだがこいつ人と慣れるまでこうなんじゃねぇかと予想ができたが
気づいたらございますはいらねぇだろと口に出していた
俺の前だけでは自分を全てをさらけ出してほしい
そんな思いが芽生えていた
[え〜…あ〜…慣れるまで待っててもらえると]
(は?)
言ってみたはいいもののなんだその腑抜けた返事は
拍子抜けしてしまい笑いがこみ上げてくる
(おもしれぇ奴)
何だろう こいつおもしれぇ
しかも今度は笑った所を見たことないだの言ってきて
俺も一応人間だ確かに感情が見えにくいと言われればぐぅの音も出ないのだが
俺だって笑う時は笑うと軽口を叩いてやると彼女はにこやかに笑う
(……………ああ)
幸せそうな顔しやがって
見た瞬間言葉のレパートリーがないから安直かもしれないが綺麗で叶うならずっと見ていたいほど
それは脳に焼き付いて離れない
[………………ったく………]
こいつの笑顔が見れるなら何でもできる
憂いなく笑えるなら俺は
これだけは理解できたのだ