第4章 成長
[くそぉぉぉもう一回だ!亀の坊主!]
[え〜〜じいちゃんもう終わりにしようよ]
[いや、もう一回だ!!]
[おじいちゃん!囲碁してる暇あるなら仕事してよ!]
[げっ………]
[あらあら、怒られてるわねふふふ♪]
あれからもう数年
条くんは16歳になり私は高校を卒業し銭湯で働いていた
時の流れは早いものだと感じる
年は取りたくないけど悪いことばかりではなかった
(……すっかり慣れちゃって)
条くんはおかげさまでと言うべきか鶴の湯の常連になり他の常連さんにもとても好かれていておじいちゃんおばあちゃんも実の孫のように接している
今ではあんな風におじいちゃんや常連さんと囲碁や将棋なんかをするようになった
人の輪に入るのは苦手なところがあるけれどみんなの気さくな性格のおかげがいつの間にかあんなふうに溶け込んでいた
今ではこの光景が微笑ましかった
[ちゃん手伝うよ〜それ重たいでしょ〜]
[だ、大丈夫だよ!条くん!]
[いいから〜俺に任せてよ]
[ありがとう…!助かるよ〜]
条くんには時折仕事を手伝ってもらっている
申し訳ないとは思っているけどいつもお世話になっているからと日頃のお礼とのことで譲らなかった
おじいちゃんも年だし力も弱まってきたから手伝ってくれて助かる
穏やかな日々
まるで"今まで"のことが嘘かのように
私達は幸福な時間を過ごしていた