第19章 吐露Ⅴ
[梶蓮Side]
あまり口を開くこともないまま家に着くことができた
ばあさんと会ったからかこいつの顔の表情がパッと明るくなっている
そりゃあそうだろうな
俺みたいなやつと会って緊張していたんだろうからな
これで俺の役目も終わりだ
挨拶も不要だろう
そう感じて踵を返しここから出ようと足を一歩一歩進める
後ろから物音がする
気のせいかと思い振り向いてみたら
何であいつ追ってきているんだ
怪我しているのに
はたから見ると足元もおぼついていて転んでもおかしくない動きで
まずい
そう感じて走ったら案の定思った通りで転ぶ寸前で間に合うことができた
危機一髪だったが無事でよかったと息を吐く
せっかくここまで来たのにまた怪我したらどうするんだ
無意識だが抱きとめていた手に力がこもっていた
このままの姿勢も色々な意味でよくない
こいつから離れると今度は顔が暗い
どうしたと思い口を開こうとした瞬間
雫が落ちた
雨かと思ったが全然違う
こいつの顔から涙が出ていたのだ
俺のせいか
思い当たるとしたらそれしかないがでもこれくらいで泣くのか
何が原因があるのは確かだ
だが泣いている顔よりも笑った顔のほうがこいつには似合う
俺はこいつの涙を拭っていた