第37章 初めてのヴァレンタイン 中原中也
中也から猪口齢糖の香りがした途端に不安になり、涙が止まらなくなった。
今日はヴァレンタインデー、女性が大切な男性に猪口齢糖を贈る日だと姐さまに教えてもらったのだ。
中也から猪口齢糖の香りがしたということはつまり、、、
他の女性から中也は猪口齢糖を受け取ったということ。
私がもっと早く猪口齢糖を渡さなかったから、中也は他の女性から猪口齢糖を受け取ったのだ、、、
こんなにも誰かを失いたくないと思ったのは初めてで、涙が溢れ出した。
この感情はどうすればいいの、、、?
咄嗟に私は中也にしがみ付き、嫌いにならないで、、と言葉に出していた。
優しく私の名前を呼び、いつものように頭を撫でてくれる中也のおかげで落ち着きを取り戻すことができた。
そのタイミングで中也は私を嫌いになる訳ないこと、どうしてそんなことを云い出したのかと訊ねてきたので、私は素直に答えた。
「この匂いは糞太宰が貰った猪口齢糖の匂いが移っただけだ。俺は受け取ってねぇよ」
『へ?、、、太宰さんが貰った猪口齢糖、、、?』
やっと自分が勘違いしていた事に気付いたのであった。
それと同時に嫌な予感がした。
何故なら、、、、
ドンッ
『ちゅ、、、中也、、、ン//』
「俺がどれだけ手前のこと想ってるかしっかりと言葉と身体で教えてやんねぇとなぁ?、、、ちゃんよぉ」
気付けば私は壁と中也に挟まれていた。
耳元でいつもより低い声で囁かれば自然と反応する身体。
『中也、、待って!まだ仕事、、んぅ///』
「この後は書類片付けるだけだ、ンなのは後でだ、、、諦めて抱かれろ、」
ギラリと光る瞳に私はもう逃げられないと悟った。