第1章 はじまり

『で？』

「……え…？」

『え？やあらへんやろ。
アンタの名前や…アンタの名前』

「　…です」

こっちが…自分の名前を名乗ると
うんうんと…その直哉と言う
名前の男性は…満足そうに頷いて。

『ほな…ちゃんやな。
べっぴんさんの自分に、
ぴったりのええ名前や…
んじゃ…俺…、帰るわ。
また…直哉がよろしゅうに…
言うとったってパパに言うといてな～』

そう直哉がフルダテに伝言を頼むと、
こっちの方を向き直って。

にこっと…その顔が笑顔になる。

『んじゃ…ちゃん、
あっちに…車待たせとるから
一緒に、家に帰ろか…？』

「え？帰る…って…」

『自分の家が…禪院家と交わした
約束ちゅーのを…、俺が
さっき書き換えたから…、
借金のカタのアンタの…身柄は
この…禪院直哉が引き受けるってな…。
ええやろ別に、俺かて禪院家のモンやし
それに…や、俺は…あの家の
禪院家の次期当主やねんからなぁ』

そう言って…もう一度…
笑顔をこっちに向けて来るが。

その笑顔が…、何故か…怖いと
私はそう…思ってしまった。

この人が…禪院家の次期当主…、
だったら……おじいちゃんや
お父さんに…言われてた通り…に。
禪院家の…ご当主様に…
お仕えする…事になる…って事？

「禪院家の…次期当主…」

『そうそう、俺な…？
禪院直哉…そうやなぁ…
まだ当主やないし…、直哉様…
とでも…呼んで貰おか？』

「直哉…様…」


こうして…『私』は、
禪院家の現当主…ではなく
次期当主…候補の…
禪院直哉…様に…お仕えをする事となった。