第16章 **16
(私、泣く程クラウィス様と離れたく無いんだなぁ···)
泣いた事により、クラウィス様と離れる事を想像してしまうと、それだけで胸が切なく寂しく締め付けるのを感じてしまった。
あんな事があったからか、ますますクラウィス様と離れ離れになるのは嫌だと再認識させられた出来事でもあった。
···それにしても、だ。
エリス様のハンカチからは品の良い香りが鼻をくすぐり、不思議と胸をスっと落ち着かせてくれた。
「エリス様、ありがとうございます」
最後に優しく目尻にハンカチの裾を当てて、エリス様はそっと手を離した。
*
「リーチェ、屋敷まで送るよ」
公爵家が用意した馬車の前では、服装を整えたクラウィス様がいらっしゃった。
「クラウィス様、お仕事の方は···」
「もちろん、爆速で終わらせて来たさ。リーチェと一緒にいられる時間は限られているからね···本音を言えば、2週間くらい家(公爵家)でもうちょっと体を休めた方が良かったんじゃないかい?体は大丈夫かい?」
と、心配そうに聞いてくるクラウィス様の言葉がエリス様と似ていて!流石は親子だなと、思わずくすりと笑ってしまった。