第1章 **01
私がやった訳じゃないけれど、···て事は待てよ?
私は婚約破棄されるんじゃ?
と疑問に思い兄に問いかけた。
「では、私は公爵家とは婚約破棄になりますね··?」
「いや、向こうは破棄する気はないらしい」
「何故!?」
「お前こそ何故公爵家と婚約破棄になると思ったんだ?」
「いや、だって今までのサクラさんに対する接し方を見れば···」
「確かにお前もキツかったとは思うが、間違った事は言っていなかっただろう」
あれれーおかしいぞー。
ゲーム内の展開をよくよく思い出してみれば、虐めていたんじゃなくて、キツい言葉で注意していたのだ。
悪役令嬢、虐めの二つのテンプレのせいで頑になっていたのかもしれない。
今を思えば、異界からやって来て異性の爵位持ちに所構わず声を掛けていたヒロインに我慢が出来ず、「節操が無くってよ!淑女にあるまじき行為ですわ!」と扇子を向けてピシャリと言い放ったのだ。
公衆の面前で。
友達の令嬢達と、ヒロインを取り囲むようにして言えば、そりゃ勘違いされてもおかしくは無いだろう。
とにかく、他にも色々とあったのだ。
「···申し訳ありません、お兄様」
「お前が謝る理由はないさ」
「けれど、公爵様にご迷惑も···」
性格ブス令嬢だなんて、とんだ汚名である。
「そんな顔をするな、もうじきその公爵様も来る。その前にその顔を何とかしておく事だな」
「えっ!?」
兄は「ははは」と笑みを浮かべたままメイドを呼び、私の部屋を後にした。
(ちょっ、準備する時間────!!!)