第9章 **09
「寒くはないかい?」
エリス様との2人きりのお茶会の後で、私はクラウィス様に案内されながら中庭をゆっくりと歩いて、大輪の薔薇が咲き誇る庭園に来ていた。
「はい。クラウィス様」
ドレスの上からショールを肩にかけて、濃紺の空に星の砂をばらまいたような夜空を見上げながら。
クラウィス様が私の手を握り隣を歩いている。
歩幅を合わせてくれているのが、嬉しかった。
「素敵な薔薇園ですわね」
夜の月の光に照らされた薔薇達は、昼とは違う意味の美しさがあった。
月明かりに照らされた薔薇に触れようと手を伸ばせば。
「ダメだよ。薔薇には棘がある」
触れようとした方の手を、クラウィス様に掴まれてしまった。
「···知っておりますわ。確かに茎には棘がありますが、花の方にはありませんもの。心配して下さりありがとうございます」
両手繋ぎになってしまった状態が何だかおかしくて、クスクスと笑ってしまった。
「笑い事じゃないよ。ただでさえ君の手は柔らかいのだから」
「あ、クラウィス様」