第9章 Dolce~Side RED
いつもより少し遅い時間。
たまの外食に、美味しい、と嬉しそうな笑顔。
「メニュー見てもいい?」
向かいのジウに渡すと、うーん、と唇をなぞる指先。
「ありがとう」
あらかた食事が終わったところ。てっきりデザートを頼むと思って待っていたが、お手洗い行ってくる、と席を立った。
ジウが立て直したメニューを開く。
(なるほど)
メニューの最後。
『Dolce』と書かれている豊富な種類に、ジウが悩んでいたわけがわかって、にやける口元を手で隠す。
まだジウが戻る気配がないのを確認し、ウエイトレスを呼ぶ。
シャンクスの要望を聞いたウエイトレスが呼び出したパティシエールがジウより先にオーダーシートを持ってきた。
要望の詳細を聞いた彼女と入れ替わるように戻ったジウの悩んでいるような顔に、ほくそ笑んでグラスに手を伸ばす。
先程のウエイトレス目が合い、礼を込めて軽く会釈する。
「ナンパでもしたの?」
そう言ってテーブルのワイングラスに手を伸ばすジウは、止める声を聞かず、クイッとグラスを傾けた。
ケホ、と顰める顔に、やきもちを焼いているのだと気づき、少し笑って水を差し出す。
「するわけ無いだろ、目の前にかわいい恋人がいる前で」
「どうでしょうね」
少しむくれるジウが可愛くて眺めていると、ウエイターが料理を運んでくる。
「おまたせしました。ドルチェ・ミストでございます」
デザートの盛り合わせを意味するイタリア語。
ジウに視線を向ける。
ついさっきまでの懐疑的な目が一瞬で変わっていた。
小さなココットなどに盛り付けられたドルチェに煌めく瞳。
分かりやすい表情の変化に、口元が緩む。
「決めきれなくて頼まなかったんだろう?」
図星をついてやると、盛り合わせなんてなかった、と嬉しそうにはにかむ。
メニューにはないそれを、見落としたんだろ、と誤魔化してワインを飲み干す。
どれから食べるか悩んでいるジウ。
甘いデザートと温かい紅茶を幸せそうに楽しむ姿。
緩む口元を隠すことも忘れて、愛おしさに溢れる笑顔をゆったりと見つめていた。
END