第3章 お題小説 Lemon
だから選んだ。
このままひと突きで死ねる方法を。
自分の心臓に深く突き刺さった刃は思いの外痛くて、顔が歪みそうだった。
だけど顔を歪めてもいけない。
その顔を彼の最後の私の記憶にしてはいけないから。
体中に生暖かい自分の体液を感じながら、奈緒はゆっくりと目を閉じた。
最後に思い浮かべたのは、あの白髪の青い目で微笑んでいる五条悟の姿だった。
『どうか私の死が、彼に優しく伝わります様に。』
今までずっと傷付いてきた彼の心に、私の死が彼の悲しみになりません様に。
「まずったよな、色々ヤバいよなぁ。」
「……ま、なんとかなるか。期待してるよ『皆』。」
「はぁ…コレ奈緒の側に置いてくれたら、ここからでも奈緒に届くのかな?」
「めっちゃ愛してるよー奈緒。」
「ここから出たら、まず奈緒の所に行かなきゃなぁ…。」
「絶対、怒ってるだろうから。」
「あーあ、早く会いたい。」
「今どん位時間が経ってるんだ?」
「奈緒は僕の側じゃ無いと寝れないからなぁ。」
「まぁ、僕も奈緒と一緒じゃなきゃ寝れないんだけどね。」
「早く会ってキスして眠りたいね…奈緒。」
ー完ー