第3章 お題小説 Lemon
久織奈緒の能力は術式では無かった。
『テレパス』と言う能力は、生まれ持って彼女が持っていた能力で、呪力とは全く関係なかった。
では何故、彼女が補助監督をやっているかと言うと、彼女は呪力も備わっていて、呪霊も視えそして、帳も張れた。
何より、彼女にとってこの世界は生きづらかった。
そんな彼女が呪術高等学校を選んだのは当然の選択だ。
少なくとも、ここには同じ様に呪霊が視える仲間が居て、彼らは術式と言う能力を持っているから。
『異質』それが奈緒にはとても心地よかった。
だからこんなセクハラまがいな事も我慢出来る。
高専の中でも馬が合わない奴は居て、奈緒がそれらを排除する生活に疲れた事に『五条悟』は現れた。
下心を隠さずに奈緒に言い寄ってくる男は多い。
どうせバレているからと、開き直って露骨に誘ってくる男の心の中は、言葉よりも酷く奈緒を扱っている。
本当に誘いに乗るかどうかより、むしろその変態的な興奮を楽しんでいる様にさえ思えた。
『すげえなぁ!俺すらなんて言ってるか分かるぜ!』
そう笑いながら現れたのは、2つ年下の高専の後輩だった。
『五条悟』が来て、今までニヤニヤしていた男は、顔を青くして逃げる様に去っていった。
『アイツ何考えてたの?どうせくだらない事だろ?俺ならもっと……。』
『っ!いい!止めて!考えないで!!』
五条悟が考えた途端、とても卑猥だけでは片付けられない隠語が頭の中にイメージとして流れてくる。
五条悟が思い浮かべる自分の淫らな姿や、何をされるか詳細に映像が浮かび上がって、彼女の顔は燃え上がる様に真っ赤になった。
そんな彼女の顔を見て、満足そうに五条悟はニヤッと笑った。
『久織奈緒、俺はあんたに裏も表も無い言葉だけをかけ続けられるぜ。』
五条悟は、思い浮かべる前に、言葉が出る人だった。
考えるより先に出た言葉はいつも彼の本心だと分かった。
人の憎悪にまみれた裏と表の言葉に苦しかった日々に、それはとても奈緒の心を軽くした。
初めて会った時から知っていた。
彼が自分をどう思っていたのか。
そして、自分も彼をどう見ていたのかは、この瞬間ハッキリと気が付いた。