第5章 居なくならない*
レイの懇願するようなキスに答える
キスに夢中になるうちに押さえつけられた手が絡む
ひとしきりしたあと伝う糸と同じように手が解かれる
背伸びをしてシャワーにかき消されないようレイの耳元で
「居なくならないよ」
そういい肩にかけた手を首に回しぐっと近づけるとヨシヨシと頭を撫でる
レイの気持ちはわからない
ただ単に妹のように育った私がそばを離れるのが嫌のだろうか。
娘がお嫁に行くようなそんな気持ちなのかもわからない。
でも今はまやかしでも良い。好きだと愛されてると勘違いしたくて抱く力を込める。
「ずっとそばにいるから だからレイもそばに居て。離れないで。」
レイの言葉に応えるように
でも自分の都合もいいようにも捉えて自分の気持ちを乗せる。
なんて都合のいい女
彼にとってはそうではないかもしれない
でもそう思わずにはいられなかった
「レイ。 好きだよ。 そばに居てね。」
そう消えそうな声で呟くとぎゅっと抱きしめ返される
何も帰ってこない
これが現実
そう思いながらも甘いまやかしに委ねる