第1章 独占したいと思ってしまう 【荒北 甘】
好きだ好きだと思うにつれて苛立ってくる。
他の男に振り撒く笑顔とか、さりげなく気を配るとことか、視線とか。
「ちゃんタオルー!!」
「はーい!」
凄く気に入らない。
「あと肩揉んでくれんか?」
「イヤです」
「なに!?この俺に触れていい許可がおりたのだぞ!光栄に思え!」
「なんなんですか。アホですか。マネージャーはパシりじゃありませんから」
「ハッハッハ!さては照れ隠しだな?可愛いやつだ!」
「はいはい、タオル置いておきますね」
「、この前のデータはまとめてくれたか?」
「はい!あ、教室に忘れちゃったかな…取ってきますね!」
「すまんな」
全くもって気に入らない。
東堂のかわしかたも、福ちゃんへの従順さも。俺に対するものとは違う全てが気に入らない。
「荒北先輩?」
「あ?」
「具合悪い、ですか?」
足早に教室へ戻ろうとする足を止めて、少し離れた木陰に座ってる俺の顔を覗き込む。無邪気なのかなんなのか、ころころ変わる表情が可愛いと思って、そんなとこが気に入ってんだってわかってんだけど今はどうもそれすら受け付けない。
「フツーだよ。早く教室行けヨ」
「…あ、じゃあ…」
辺りをキョロキョロ見渡して、何を考えてんのか俺の前にしゃがみ込んだ。そして軽く、ほんの一瞬だけ唇を重ねる。
「元気出してください。ね?」
「っ…かつく…」
「へ?」
「テメーのそうゆうとこ、すっげームカつく」
「…あははっ!ごめんなさい」
年下のくせに全部見抜いたようなツラして、どんな言葉で返したっていつも笑ってやがる。おかげで俺は顔が熱くて戻るに戻れない。
「くそっ。可愛いことばっかしやがって」
立ち去って、姿が見えなくなった後で俺も立ち上がった。後を追って、一人机を覗くの背後をとって、それで、
「ひぁっ!?せんぱっ…!?」
「バーカ。あんなんじゃ足らねェっつーの」
抱き締めて俺の手中に入れてしまえば顔を真っ赤にして収まるこいつを二度と放してやるものか。お前は俺のもんだ。その唇も、手も、体も声も全部、誰にも譲るつもりはない。
fin.