第3章 爆豪勝己
『はぁ、緊張するなぁ。』
白い息を吐き、1人呟きながら雄英高校の大きな門を潜る。
今日は雄英高校に入学して初めてのバレンタイン。
入学初日に電車で痴漢被害に遭った。初めての経験に怖くて声も出せずに戸惑っていたところを助けてくれた人、それが爆豪勝己くん。私はその日からずっと彼に片思いしていた。
幸いにも彼は私と同じ雄英高校の制服を着ていて、大人っぽいし先輩かな、と思っていたのだけれど入学式で偶然彼を見つけてそこで初めて同い年なんだと知った。
けれど彼はヒーロー科、私は普通科という事もあり全く話す機会もないまま今日に至る。
手作りのお菓子が入った紙袋を持って、授業の合間に何度か爆豪くんのいる1年A組の教室へ向かうも、振り絞ろうとした勇気も泡のように消えて結局何度も教室を通り過ぎてしまった。
「、そういえば爆豪くんに渡せた?」
お昼休み、教室で一緒にご飯を食べていた友達が卵焼きを頬張りながら私に聞いてきた。
『ううん。まだ、渡せてないの』
「えー!学校終わっちゃうよ?早く渡しなって!」
『うぅ......分かってる...』
そんな事私が1番分かってる。私だって早く渡したいもん。それで好きって気持ち伝えたいもん。
お昼休みの終わりかけ、紙袋を持ってもう一度1年A組の教室に向かった。教室の奥のドアの前で何やら4、5名の可愛い女の子たちが集まっている。手にはそれぞれ可愛らしくラッピングされた小包を持っていた。
あんなに女の子たちがたくさんいるところで爆豪くん呼ぶの恥ずかしいな......。