第6章 紅色の邂逅 ◆
「悟くん…っ悟くん……!」
何度呼びかけても、悟くんは振り返らない。
ただスタスタと私の手を引いたまま歩き続ける。
「ま、待って……悟くん!」
私が立ち止まると、引かれていた手はぴたりと止まった。
悟くんの背中越しに、ピリピリとした空気が伝わってくる。
「…なんだよ」
低く、抑えた声。
「っごめん…」
「………あのさぁ」
悟くんはそう言うと、ゆっくりと振り返った。
その表情はどこか苛立っていて、でもそれ以上に悲しそうで。
胸がズキリと痛む。
「俺、今超ムカついてんの。…それに、すっげぇむしゃくしゃする。……直哉にだけじゃねぇよ」
「……っ!」
「あんな好き放題言われて、何も言い返さなかった夢主にも…正直ムカついてる」
青い瞳が、真っ直ぐ私を見つめる。
「……夢主は、俺に愛されてる自覚ねぇの?俺がどれだけ夢主のこと好きか、伝わってなかった?」
悟くんは私を見つめたまま、壁に片腕をつき、もう片方の手を私の手首に添えた。
「っそんなこと…!」
「俺の愛、マジナメんなよ。…夢主が少しでも不安ってんなら、嫌ってほど教えてやるから。……だから、“私は五条悟が惚れてやまない女”だ、って背筋伸ばして堂々としてろ。それから!さっきみたいな変なこと言ってきた奴がいたらすぐに俺に言うこと!…約束して」
悟くんの言葉が、不安を消し去るように、胸の奥にじんわりと広がっていく。
「……うん。約束する…!」
そう言うと、悟くんはニッと口元を緩めて、私の頭をぽんっと撫でた。
「ン、破ったら本気で拗ねるからな」
「っ破りません!……わっ!」
不意に、握られていた手に力が込められ、グッと引き寄せられた勢いで、悟くんの胸に飛び込んだ。
「……今から、メチャクチャ可愛がっていい?」
その答えは、もちろん───