第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
軽くアリアネに睨まれたリーマスは肩を竦めさせながらも、ハリーに笑みを浮かべた。
「ちょっと中に入らないか?ちょうど次のクラス用のグリンデローが届いたところだ」
「何がですって?」
「グリンデローよ、ハリー」
ハリーはリーマスとアリアネのあとについて教室の中に入っていく。
部屋の隅には大きな水槽があり、鋭い爪を生やしている気味の悪い緑色の生き物がいた。
顔をガラスに押し付けて表情を変えたり、細長い指を曲げては伸ばしてと繰り返している。
「水魔だよ。こいつはあまり難しくないはずだ。なにしろ河童のあとだしね。コツは、指で締められたらどう解くかだ。以上に長い指だろう?強力だが、とても脆いんだ」
「私達の授業でも使うのよね」
「もちろんだよ。ハリー、アリアネ、紅茶はどうかな?私もちょうど飲もうと思っていたところだが」
「いただきます」
「いただくわ」
リーマスはヤカンを探してから、杖でコツンとヤカンを叩いて見せた。
するとたちまちヤカンに中に入っていた水は沸騰し、口からは湯気が溢れ出す。
「お座り。すまないが、ティー・バッグしかないんだ。しかし、お茶の葉は2人ともうんざりだろう?」
「先生はどうしてそれをご存知なんですか?」
「アリアネとマクゴナガル先生が教えてくださった。はい、二人ともどうぞ」
少しだけ欠けたマグカップを2人は受け取り、1口だけ飲む。
「気にしたりしてはいないだろうね?」
ハリーは一瞬、家の近くで犬を見た事を話そうか悩んでいた。
ちなみにアリアネもダイアゴン横丁で犬を見たことを話そうか悩んでいたが、余計心配をかけると思ってはなしてはいない。
悩んでいる2人の表情に、リーマスは直ぐに何かに気がついてから声をかけた。
「心配ごとがあるのかい?ハリー、アリアネ」
「いいえ」
「無いわよ」
そう答えたハリーとアリアネ。
だが、数秒たってからハリーは『やっぱりあります』と答えた。
「先生、まね妖怪と戦ったあの日のことを覚えていらっしゃいますか?」
「ああ」
「どうして僕に戦わせてくださらなかったのですか?アリアネにも戦わせなかった……」
「ハリー、言わなくもわかることだも思っていたが」
「どうしてですか?」
「そうだね。私はまね妖怪が君たちに立ち向かったらヴォルデモート卿の姿になるだろうと思った」
