第5章 ネザーへ
「いったん逃げる!」
MENは急いで貴重そうなツールをチェストに放り込んで走り出す。MENも視聴者たちも、次に来ているはずの「アレ」をよく目視していなかった。
MENはジャンプダッシュしながら慣れた手つきで三人称視点に切り替える。後ろには、何もいなかった。
「……ん?」
急にカメラを上に向けるMEN。視聴者たちも何がおかしいのか分からず、ハテナのコメントが流れた。MENは優れた勘と重ねてきたゲーム経験で素早く一人称視点に変えるなり上空を見上げた。
「なんか落ちてきてる!!!!」
MENは大声を上げた。
思わぬ鬼畜の出現に視聴者たちも予想つかなかったようで一気にコメントが流れた。まさか鬼畜が降ってくるなんて。
「おい、これ避けられんのか?!」
MENは再びジャンプダッシュしたが間に合わずに上空から降ってきた鬼畜に踏み潰されてリスポーン地点へ。
それと同時に画面上のゲージはリセットされ、次の「アレ」が襲ってくるまでの時間をカウントし始めた。どうやらこの鬼畜パターンは、一度プレイヤーを襲えば次のアレサイクルに移るようだ。
「とりあえず、さっき何が来たのかよく見てみたいんだが……」
とMENは「アレ」に襲われた現場に向かうが、それは近づかなくてもよく分かった。
沈没船が平然と地面に生成されているのだ。
MENは笑い転げた。
「おい、沈没船は別の鬼畜だろ!」
なんでまた沈没船に襲われなきゃいけないんだと言いつつも、ちゃっかり中にあるチェストの中身はかっさらっていく。充分過ぎる鉄の中に多少の金、そして怪しげなシチューで食料を得たMENは、何かの拍子にロストした時のためにとネザーゲート前に置いたチェストに仕舞って置く。
だが、問題はここからだ。
MENも視聴者たちも沈没船に襲われた理由が分からなかった。しかも、沈没船は一見帰宅部の何かしらに繋がっているように見えない。
「まぁ、とにかくネザーに行くかぁ」
不安要素は拭えないまま、MENはもう一度ネザーゲートをくぐった。