第1章 英/甘 マカロンの心得
:ヤンデレお兄さんバージョン
※前回までで綺麗に終えたかった人は以下飛ばしてください。
※影で策略を巡らせた結果、紳士と別れさせて夢主を慰めてる兄ちゃんifルート
ぼろぼろと涙をこぼしている。
皮肉なことにかえってその姿が、彼女の彼への想いの深さを感じさせた。
「今だけ、卑怯になってもいい……?」
立ちすくみ、しゃくりあげながらそう言う。
その立ち姿が、呆然と目を見開いたアーサーに重なった。
奪われた者の、敗北者の姿。
まんまと罠にかかってくれた。
激情に任せて別れを言い放ってくれた、緑色の瞳が脳裏をよぎる。
感謝の証として、彼にマカロンでも贈りたい気分だった。
「胸を借りても……いい?」
返事はひとつだった。
「もちろんだよ」
こわれものを扱うように、震える肩を引き寄せる。
そっと抱きしめた。
不思議なことに、罪悪感はなかった。
かわりに常温の安堵感が、引き返せない速さで静かに胸を浸していく。
――やっと。
やっと、手に入れた。
もうあいつのものじゃない。
「俺はいつだってちゃんの味方だよ」
微笑み、頭をなでる。
朱に染まった頬を伝う涙を優しくぬぐう。
押し殺したような嗚咽が、聞こえてきた。
この涙も、悲鳴も全部、
――俺のもの。