第4章 米/甘 私は恋を疑う
「部活の役員に生徒会の役員とか、ふたつも大変だねこの時期は」
「部活の方はじゃんけんに負けたのよ!」
街頭の揺れる帰り道。
悔しがる私を、アルはまたもHAHAHAと陽気に笑い飛ばした。
その右手にはさきほど「重そうだね、持つよ」と言ってとられた私の鞄が収まっている。
慣れてしまったやりとりを思い出しながら鞄を見ていると、アルが視線に気づいたらしい。
ふとしたように尋ねてくる。
「そういやずっと疑問だったんだけどさ、どうして俺と一緒に帰ってくれるんだい?」
「……なにが言いたいの?」
「いや、誰かに誘われてもいつもなにかと理由をつけて断ってるだろ? 菊とか耀でさえ断ってるじゃないか」
「それは逆に私が介g……護衛しなきゃならない事態も考えうるから怖くて断ってるの」
「ならルートヴィッヒは?」
「もれなくギルベルトがついてくるから却下」
「じゃあヴァルガス兄弟は?」
「兄にはアントーニョが、弟にはギルベルトがもれなくついてくるから却下。本当なんなのあいつ超うざい!!」
「じゃ、じゃあイヴァン――」
「もれなく誰がついてくるかわかってて言ってるそれ!?」
息荒くまくし立てれば、それもそうかと肩をすくめるアル。
似合いすぎな仕草になんだか怒りがこみ上げてくるが、私はフンッと息を吐いた。
「ただ単に、荷物持ち、暗い夜道の護衛という善意のボランティアをしてくれるから、ありがたく享受してるだけよ」
事務的ともいえる口調に、アルはしばしびっくりしたように青い瞳を見開く。
そして目を細め、仕方ないなぁとでも言いたげに口元を緩ませた。
「そうかい」
「そうよ」
「……」
「……」