第4章 北風と太陽〜居場所のない家庭生活
子供達だけならまだわかる。思春期だからイキッテルだけとか、おかしな態度も今だけと言い聞かせられるが妻の態度も冷たい。
新婚の頃は愛し合ってたのになぁ。お互いに手を繋ぐこともなくなり、会話も少ない。会話しても連絡事項だけ。せっかく、私が日常会話をと思ってテレビの話をするも、冷たい態度を取られるのだ。
「テレビの話はいましたかないんですけどー。そんなことより、生活費を渡してくださる?海夢の化粧代だってバカにならないんですからね?」
「はい・・・すみません。」
なんで私が謝ってるんだろ?
気を利かせて家事を手伝おうとするとキッチンには入らないでと言われて沈む日々。
そんな時にコロナという感染病が日本中に流行り始めた。お陰で私の会社はリモートワークが多くなり、琢磨の学校も閉鎖されてリモート授業に切り替わった。海夢の高校はまだ閉鎖されておらず、マスクをつけてなんとか通っている。
そんな朝のことだった。
おはようなんて私が挨拶しても返事は返ってこないことくらいわかっている。まぁ、いつものことだこらいいんですけどね。
椅子に座って私が朝ごはんを食べようとした時に向かい側に海夢がやってきてドサっと座ったかと思いきや、すぐに立ち上がった。
「あーこいつの前で食べんのマジやだわー。お母さん!お弁当ちょーだい。あと腹減るからパンかじっていい?」
「いいわよ。マスクつけていきなさいよ。」
「はーい。」
ん?海夢はマスクをつけていたけれど鼻が少し出ていた。注意しちゃいけないことくらいわかっていたのに私はついいつもの癖で言ってしまった。
「マスクずれてるぞ!鼻のとこまでつけなさい。」
「は?うざっ。何様のつもり?こんな時だけ父親ヅラかよ?まじきっしょーーー朝から説教やめろし。」
「いや、説教とかそんなつもりはなくてー。」
「ちょっと朝からなんなのよ。説教はやめなさいよ。」
え?なんで妻に私は怒られてるんだ?
これが令和の価値観というやつだろうか?余計なことを言ってしまったと思った時には既に遅かった。
海夢は不貞腐れて弁当を鞄にしまって家を出て行った。