第8章 ブレーメンの音楽隊〜それぞれの過去と向き合った今
「あの、えっと・・・バンド活動をやらせていただきたいです。」
翌日、短大の授業が終わり帰宅した際に両親にこう切り出した。
「趣味ならわかるけどな。それは仕事とは別なんだろ?」
父が俺に怪訝そうにそう聞いた。
俺は正座して拳を膝に握りしめて言った。
「今でも悔しいと思ってるんだ。音楽大学に行きたかったけど金銭的に無理で諦めてしまったことを悔やんでて・・・本気で向き合いたいと思ってます。もちろんすぐに売れるわけじゃないからあれだけど頑張っていきたいので許してください。」
「気持ちはわかるけどそんなにすぐに売れるわけないじゃない?じゃあ、1年頑張って諦めたらどう?これだけやればー。」
母にもため息疲れたけれど母の言葉を遮るようにして俺は言った。
「本気なんだ!そのためならアルバイトだってやっても構わないよ。じゃあ3年経って売れなかったらやめます。それでいいですか?」
俺の熱意が伝わり両親が半ば諦めたようで賛成してくれた。
これでなんとかなりそうだと俺は心の中で嬉しさを噛み締めた。
そしてオーディション当日。
自己紹介をして得意のコントラバスを披露した。拍手喝采でこの日のうちにメンバー入りが決定した。
俺はすぐに両親や短大の教授、進路指導の先生のところに出向き許可をもらうことができた。そして今日からバンド活動と短大での授業に翻弄することになる。
そんな俺は目の前がイキイキして清々しいと思った。