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イケメン戦国《私だけを囲うひと》

第3章 夜の気配



夜は、音を失ったように静かだった。

遠くで風が木を揺らす気配だけがして、
屋敷の中には、灯りの揺れる音さえない。

「……起きていると思った」

背後から、光秀さんが現れた。

そう答えると、彼は何も言わずに近づいてくる。
足音が、やけに静かだ。

「——夜はな」

すぐ隣で、彼の声だけが響いた。

「人の本音が、表に出やすい」

視線を向けると、ちょうど目が合った。
暗がりの中でも、見られているのが分かる。

何もしていないのに、ドキドキと胸の音が勝手に大きくなっていく。


「……私もですか」

「あぁ」

光秀さんは、私の隣に立ったまま、肩が触れそうで触れない距離まで近づいてくる。

「こうして黙っていると…」

囁きが、夜に溶けるように落ちていく。

「お前が何を考えているか、手に取るように分かる」

「……私が何を考えているか、わかるのですか?

「無論だ。…だから、これ以上は近づかない」

そう言いながら、光秀さんは動かない。

「夜は、焦ると壊れるからな」

その言葉だけが、静かに落ちていく。

「壊したい時もあるのだが……今夜は違う」

ちらりと、こちらを見る。

「こうして側にいれば、十分だ」

それ以上、何も起きない。
なのに、心臓の音だけがやけに大きい。

光秀さんは、夜の闇に溶けるように一歩引いた。

「冷える前に戻れ」

そう言って、背を向ける。

残された私は、その場から動けなかった。


——触れられていないのに、
夜の気配と、あの声だけで、頭がくらくらする。


結局、今夜は眠れなそうだ。





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