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【呪術廻戦】甘く愛される短編集《R18》

第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】






いつだったのでしょう。
君の笑顔が好きだと気づいたのは。




『建人っ…!はやくしないとっ。急いでー!』




私を呼ぶその高く美しい声も、私を映すその大きな瞳も、自分だけのものであったならどんなに幸せかと、そんな風に思い始めたのはいつからだったのか…

「雫、危ないですよ、そんなに走ったら。ほら、前を見て……って…」

後ろを振り向きながら走ったせいで、足がもつれて倒れ込む雫。


ほら…言わんこっちゃない。
それでも、私が急いで助けに行く必要はない。

「もう、何やってるの雫。ちゃんと前見て走らなきゃ危ないよ。」
 
雫に手を差し出し、体を支えるお日様のような笑顔。

『雄、ありがとう。だって建人がシャキシャキ歩かないんだもん。お爺さんみたいにのんびりしてるんだもん。』


誰がお爺さんですか…
そりゃそうでしょう。任務で疲れているのに宿の主人に教えてもらったヘブンロードを歩きたいって…子供じゃあるまいし。


『わぁっ…!まだ道が見える!歩けるよ、ちょうど干潮だったんだ。ラッキー!ねぇ、2人は何をお願いするか決まった?』

「んー、僕は……もっと強くなれますように、かな。」

『ははっ、何それ。他力本願。強さは自分で鍛えて手に入れるものでしょ。』

胸に軽くグーパンチを受ける灰原。

「何だよっ、じゃあ雫は何をお願いするの?」

『んー……言わないっ。言ったら効果なくなるんだから。』

「はぁ⁉ちょっとそれ言わなかったじゃん。」

『ははっ、これで雄が強さを手に入れることはできなくなっちゃったね。』

「何だよそれー。じゃあ僕、雫とずっと一緒にいられますように、にしようかな。」

『だーかーら、言ったら意味ないでしょ』

「あ、そっか。」

『建人は?何か願い事ないの?』

「ないですね。望みは自分自身で実現させるものですから。」

『現実的すぎてそれもどうなのー⁉』

「そうだよ七海、何かあるでしょ。」


ないと言ったら嘘になりますが…
それを私の口から言うことは絶対にありません。


ヘブンロードを渡りきった先の島にある、小さな祠に向かって手を合わせ、目を瞑る雫の横顔を見ながら思った。


これから先も、君がずっと…幸せでありますように。
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