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六作目 結城龍馬

第1章 本編


星の形のお砂糖は特別だ。
そのままでもかわいいけど、
お茶に沈む瞬間はもっと素敵だ。
形の崩れるまでの一瞬、
カップのなかで砂糖は本当の星になる。

「何飲む?」

俺は少し考えたあと、ブルーマウンテンと、言った。

「なぁに、今日はかっこつけたい気分なの?」

あのお砂糖は、琥珀色のお茶のなかにとけていくのが
一番きれいなのになぁと思いながら、
コーヒー豆の袋を開ける、
恋人の穂波は、コーヒーはあんまり飲まないけど、
この香りは好き。こんなにいい香りがあつまると、
どうして、苦くなるのか、不思議だ。

「そういうんじゃねーよ、穂波だって、
ミルクを入れるのに、レモンティーだろ?」

「だって、ミルクを入れると、
お砂糖が見えなくなるでしょう?
龍馬くんはいつも、これがなくなる頃に、
買ってくるんだもの。それが遠くなって嫌だな」

「じゃあ、もっと減らそうか?」

「だめ、そしたら使えなくなっちゃう!」

声をあげて笑う、俺を背に、
お湯を注ぐとコーヒーの香りが強まる。良い香りだ。

「今度は、半分になる前には来るよ」

「ほんと?」

「あぁ、レモンの合う茶葉も一緒に」

「じゃあわたし、香りのいいコーヒーを探しにいくわ」

紅茶は蒸してきたし、コーヒーは待つだけになった。
焼いたお菓子、いつもよりは上手く出来たと思うんだけど。

龍馬が穂波の席に、一番お気に入りの
ティーカップを出してくれてるのがすごく嬉しくなる。
淹れ終わったコーヒーの香りと
紅茶の香りが混ざって、喫茶店の香りがするみたいだ。

まだ飲みはじめてもいないのに、こんなに楽しいお茶会も、
次は、いつやるか、わからない。
始まる前から終わるのが惜しい。

「少しちょうだい」

小さなティースプーンでコーヒーを掬ってみた。

レモンの味と混ざって、不思議な味がするけど。
あんまり苦くななかった。でも、
やっぱり、あの素敵な香りの味とは違っていた。

「うーん」

「美味いか?」

「あんまり、やっぱり紅茶が美味しいわ」

「次は紅茶にするかな」

「でも、龍馬くんがコーヒーを飲まないと、
コーヒーの香りが楽しめないからたまには飲んでね」

「ミルクと砂糖を入れれば、
穂波でも飲めるんじゃないか?甘いのを入れてやるよ」

「ほんと?うんと甘くしてね」

コーヒーを飲んだあとの紅茶は、やっぱり甘く感じた。
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