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六作目 結城龍馬

第1章 本編


結城龍馬は、米国にある、刑務所の中で、過ごしていた。

困ったもんだ。今日は月明かりが眩しすぎて眠れない。

今日もその日のような静かな夜だ。
あることを思い出した。

「見て、キレイな満月!」

「おいおい…夜に窓を開けっぱなしにすんな。
また虫が入るだろうが」

「それより、龍馬君も見てよ。
ほら、テニスボールみたい!」

「…月をテニスボールに例える奴は初めて見たぞ。
第一あんたの国では月は白なんじゃねーのか?
軟式用のゴムボールじゃねーんだぞ」

「日本では黄色でしょ?」

「そりゃ…そうだが」

「ねぇ、あれって手が届かないかしら?
丁度手で握れそうじゃない?」

「…やれやれだな」

気が付いたら俺も手を伸ばしていた。
あの日、あいつがやっていたように。
鉄格子に阻まれた月の光に、
勿論手なんか届くはずがない。
俺は自分の手をじっと見つめた。
何一つ守れなくて、何一つつかめなくて、
その癖今も無駄に動き続ける、
ふがいない自分の右手を。そして俺は月明かりに背を向け、
目を閉じて毛布にくるまった。それでもあの光は、
ろくな明かりもないこの牢獄を、ろくでもない俺を、
煌々と照らし続けていた。

困ったもんだ。今日は月明かりが眩しすぎて眠れない。

後日、そんな、罪を犯した俺は、
仮出所が、決まってしまう。

そして、米国からの追放が決まり、
日本に帰りざる負えなくなったのだった…
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