第9章 結末
「元気そうでよかったです」
とヒカックさんからの真面目そうな文面に、ぽんぴーさんは眠いの一言だけ。コハロンさんにいたってはよく分からないスタンプが送られてきて私は思わず一人で笑ってしまった。
そして、最後のぎぞくさんからのメッセージに。
「元気そうでよかったです。私は体調を崩して声が出なくなりましたが、ご心配なく」
え?
私は一瞬息を飲んだ。
それと同時に、白蛇さんがイタズラにMENさんから離れたあとのことを急速に思い出し、体調を崩したのは守護霊が離れたからなのか、という言葉を思い出した。
あの死神が、わずかながらでもぎぞくさんに影響を及ぼしていたのだろうか。
ぎぞくさんには守護霊がいない。そのことから私ではなく、ぎぞくさんにターゲットが向いたのだとしたら?
私は心配になり、数分返信も忘れて色々と考えた。
だが、ただのメカニック担当兼雑務の私が再びゲーム実況者さんたちともう一度会えるはずもない。私は、どうかすぐよく治りますようにと、ぎぞくさんに「お大事にしてください」とメッセージを送った。
ため息を吐く。視えたところでこんなにも無力な自分が恨めしい。せめて私に幸運を授けられる守護霊にでもなれたのなら。そんな馬鹿げた考えをしてしまうくらいには、私の心は弱っていたのかもしれない。
お昼ご飯を食べ終え、お弁当を片付ける。その差し伸ばした手に誰かの手が重なってぎょっとした。
急いで顔を上げると、いつからそこにいたのか、光り輝く女性がこちらを見つめて微笑んでいた。
この人、コハロンさんのところにいた守護神だ。
二人いる守護神は顔もそっくりなのでどちらかは分からないが、その女性は一つ瞬きをし、私の頬に触れてふわりと消えた。あとには散り散りとした光の粒だけがしばらく漂い、そして消えた。
「なんだったんだろ……?」
その数日後、ぎぞくさんの体調が回復したと聞いた。それがあの時見た守護神のおかげなのかは分からないが、白蛇さんが残してくれたブックマークにある記事には、強い守護霊のそばにいる人は憑き主以外にもその幸運を授かりやすいと書いてあったし、少しは関係があるのかもしれない。
そうして私は、今日もドズル社と働く社員の一人として、生きている。
おしまい