第4章 動乱【土方歳三編】
それに、彼のお父様も凄く親切にしてくれた。
子供が、ましてや女が剣術を習いたいと言っても馬鹿にはしないできちんと教えてくれたのだから。
「君がここに居るということは、まさか千鶴ちゃんもいるんですか?」
「あ、はい……。実は、姉妹でここでお世話になっていまして」
「そうなんですね……」
「そういえば、八郎お兄さんは今日はどうしてここに?」
新選組の屯所を訪ねてきたということは、新選組に用事があるのだろう。
そう思って聞けば、八郎お兄さんはちらちらと屯所の方へと視線を向けていた。
「ええ……実は……」
「あ……」
もしかして、武田さんの事を気にされているのかな。
それとも武田さんについて抗議しに来たのだろうかと思っていれば、私たちの話し声が聞こえたのか土方さんが姿を見せた。
「土方さん!」
説明しようとするよりも早く、八郎お兄さんは土方さんへと駆け寄った。
「あ……やっぱり、トシさん!八郎です、お久しぶりです!」
「お、おめえは……八郎か?なんだってこんな所にいるんだ!」
「……え?」
二人の会話に私は首を傾げた。
お互いの名前を呼んでいるということは、二人は知り合い同士なのだろうか。
「ふふっ……驚きました?幕命で京視察に来てるんです。それより、新選組って本当にトシさんたちのことだったんですね!この目で見るまでは信じられなかったけど……おめでとうございます、本当に侍になられたんですね」
「おい、冷やかすなよ。まだ扱いは浪人と同じなんだからよ」
「でも、侍になりたいって夢が叶ったじゃないですか」
「……冷やかすなっていってんだろ!」
「いいえ。江戸じゃ、泣く子も黙る新選組といったら、とても有名なんですよ。それに池田屋の話も聞いています。皆さん、とてもご活躍だったみたいですね」
八郎お兄さんが褒めれば、土方さんは珍しく照れた表情でそっぽを向いていた。
嬉しそうな恥ずかしそうな、そんな見たことの無い表情である。
「……ふん。まあ、ぼちぼちってところだ」
どうやら、話を聞いた限りでは八郎お兄さんは土方さんを訪ねてここに来たみたい。
しかも昔からの知り合いみたいな口ぶりである。
そう思いながら、先日私を助けてくれたのが八郎お兄さんであることを土方さんに言わなければと思い、会話が一段落した所で、土方さんに声をかけた。