第18章 修羅の轍【沖田総司編】
彼女の瞳は真剣だった。
それに私たちの身を案じてくれているようで、その気持ちは本当に嬉しい。
だけど、私は新選組から離れたくなかった……千鶴を守るのに苦労するかもしれないけれども。
「ありがとう、お千ちゃん。でも……」
千鶴もどうやら新選組から離れたくないようだ。
そんな私たちの気持ちを察したのか、お千ちゃんは少し困ったような表情をしなから尋ねてきた。
「もしかして……二人とも、ここから離れたくない理由でもあるの?」
「うん………」
「……誰か、心に想う人がいるとか?」
「「えっ!?」」
お千ちゃんの唐突な質問に目を見開く。
だけど彼女の様子からして、からかうような調子は微塵もない。
それなら私も正直に答えるべきだろう。
「うん、実は……」
お千ちゃんは私の言葉に少しだけ驚いた様子を見せた。
だけど彼女はすぐに口元を緩める。
「……そっか。それが誰なのかまでは聞けないけど……千尋ちゃんが一人の女の子として見つけたものが、ここにあるのね。……それなら離れろなんて言える筈ないか。それに千鶴ちゃんも千尋ちゃんから離れたくないだろうし」
「……お待たせしました」
「長く、お待たせしてしまい申し訳ありません」
広間に戻ると、幹部の方々は少しだけ難しい表情をしていて、君菊さんは少しだけ厳しい表情をしていた。
すると近藤さんが私たちへと声をかけてくる。
「どうだった?結論は出たかな」
私と千鶴が、その結論を答えようとした時だ。
傍にいたお千ちゃんが私たちよりも先に、一歩前に進み出た。
「はい。彼女たちのことを、これまで通りよろしくお願いします」
「お千ちゃん……」
「姫様……よろしいですのか、本当に?」
「ええ、もう決めたことだから。今は、彼女たちの意思を優先しましょう」
お千ちゃんは私たちの意思を尊重してくれた。
そのことを嬉しく思っていれば、近藤さんは朗らかに微笑んでから小さく頷く。
「……わかった。そういうことなら今後も、我々新選組が責任を持って彼女たちの身を預からせてもらおうじゃないか」
私がここに残ると知ったからか、厳しい表情をしていた永倉さんたちは明るく微笑んでいた。
「まあ、大船に乗ったつもりで任せてとけって!」
「新八の船は泥舟だけどな。しかしまあ……良かったな」