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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第18章 修羅の轍【沖田総司編】


山南さんの言葉を聞いた瞬間、君菊さんは厳しい表情になり彼を睨みつけた。
だけども睨むだけであり、何も言わなかったのはお千ちゃんの手前だろう。

「そうですか…困りましたね。どうしても、承知しては頂けませんか?」
「……ちょっと、待ってくれるかね。肝心なことを確かめていないじゃないか」
「肝心なこと?」

言葉を遮った近藤さんは、私たちの方へと視線を向けていた。
そして優しい表情で問うてくる。

「……雪村君たち。君たちは、どう思うんだね?」
「わ、私は……その……」
「……私たちは」

どうする事が正解なんだろう。
確かに、この場にいればこれからも風間千景たちは私たちを狙ってくるはず。
だけども、八瀬姫であるお千ちゃんの元に行けば狙われる確率は減ると思う。

お千ちゃんの元に行けば、千鶴は安全な生活が出来るかもしれない。
だけど、今までお世話になっている新選組を去るということはしたくなかった。

「……ふむ、そうか。我々の前では、何かと話しにくいかもしれないな。良かったら、千姫さんと三人で話してくるといい」
「近藤さん、そいつはーー!」
「せめて誰か一人、立ち合うべきでしょう。あちらも、君菊さんに同席してもらえばいいのですし」
「まあ、いいじゃないか。我々は今までずっと、彼女たちの意思を無視し続けたんだしな。彼女たちがここを出たいというのであれば、止めることなどできんだろう」
「近藤さん……」

あくまでも、近藤さんは私たちの意思を尊重してくれるみたいだ。
本当に何処までも優しい人だと思っていると、土方さんが呆れたようにため息をはいた。

「ったく。相変わらず甘いんだな、あんたは」
「ま、近藤さんが言うんじゃ、仕方ないですよね」

沖田さんの言葉は、皆さんの気持ちを代弁していた。
局長という立場の近藤さんの言葉には重さがある……という理由もあるとおもう。
だけど、それ以上に近藤さんの人柄もある。

「三人になった途端、そのまま彼女たちを連れ去る……などということはないでしょうね?」
「心配は無用です。鬼は、一度交わした約束は守りますから」
「大丈夫だと思います。お千ちゃんは、悪い人じゃありませんから」
「私も、大丈夫だと思います。彼女は信用に値する人ですから」
「ありがとう、千鶴ちゃん、千尋ちゃん」
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