第4章 動乱【土方歳三編】
島田さんに同調するように、同じく監察方の山崎さんという方も頷いた。
「古高捕縛は、既に済まされた事柄です。その結果に不満を述べるつもりはありません」
「おまえら、殊勝な奴らだねえ。それに引き換え総司は……」
永倉さんは笑みを浮かべながら沖田さんに嫌味を言い、それを聞いた沖田さんは拗ねたような表情を浮かべる。
そして先程の島田魁さんと山崎烝さんは、土方さん直属の諸士取締役兼監察という調べ物専門の方だと教えてもらった。
そして彼らは、この八木邸に寝泊まりをしている、幹部以外で、私と千鶴の正体を知っている数少ない人達である。
彼らはそれだけ幹部の人達に信頼されているのだろう。
「……すみません、私が軽率に桝屋に近付いたから」
「君への監督不行き届きは、誰の責任ですか?」
山南さんの鋭い視線を浴びらされて、体を少し跳ねさせてから私は言葉を詰まらせた。
「一番組組長が監視対象を見失うなど……。全く、情けないこともあったものですね?」
大阪で怪我をしてから山南さんは、すっかり人が変わってしまった。
出会った頃や、前はもっと優しい言い方をする人だったのに。
山南さんの言葉に下を向いていれば、ふすまが開いて土方さんが入ってきた。
そして山南さんへと視線を向けて口を開く。
「外出を許可したのは俺だ。こいつらばかり責めないでやってくれ」
「……土方さんが来たってことは、古高の拷問が終わったのか?」
「ああ……風の強い日を選んで京の都に火を放ち、あわわくば天皇を長州へ連れ出すーー。それが、奴らの目的だ」
「町に火を放つだあ?長州の奴ら、頭のねじが緩んでるんじゃねえの?」
「それ、単に天子様を誘拐するってことだろ?尊王とか言ってくるくせに、やることはめちゃくちゃだな」
土方さんの言葉に、幹部の人たちは驚くよりも呆れた表情を浮かべていた。
「……何にせよ、見過ごせるものではない」
「奴らの会合は今夜行われる可能性が高い。おまえたちも出動準備を整えておけ」
「……承知しました、副長」
「よっしゃあ、腕が鳴るぜぇ!」
ふと、土方さんは何かを思い出したように私と千鶴の方を見た。
「……それから、綱道さんの件だ。西国の者と一緒に桝屋に来たことがあるらしい」
「え?」
「桝屋に……?」
「京で見たって言う話は本当だったってことだ。だがらそれだけだ」