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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


普通の人間ではないのだ。
その現実がひしひしと伝わってきていれば、日が少しだけ傾いて、山南さんの髪に陽光が触れたその時だ。

(……あ)

一瞬、何故かわからないけれども、山南さんの髪が雪のように白い白髪で、瞳は血に染められたように赤く見えてしまった。

「どうかしましたか?お二人とも、幽霊でも見るような目つきで人を見るのは、良いことと思えませんが」
「あ、いえ、なんでもないです!」
「すみませんでした!」

何故、一瞬だけ、山南さんがあんな風に見えてしまったのか。
そして、どうやら千鶴も同じものが見えていたようで、私たちは顔を見合わせながら汗を浮かべていた。

(見間違いだよね……)

初めて会った山南さんと変わらない姿。
だけども、私と千鶴の目の前にいる彼は、あの夜に出会った彼らと同じ存在。
その事に不安を抱いてしまっていた。

「では、私は部屋に戻ります。呼びに来て下さりありがとうございました、雪村君たち」

穏やかに微笑む山南さんを見送った私は、隣で彼の背中を見送っていた千鶴に声をかけた。

「一瞬、あの夜に見た彼らと同じ姿をした山南さんが見えた……」
「私も、見えた……」

恐怖と不安、そして何とも言えない感情が心の中で渦巻いていた。


とある昼下がり近く。
寄せては返す人の波を、隊服を来た平助君と共に千鶴と通り過ぎていった。

京の大通りは何時も賑わっていた。
江戸も賑わうことはあるけれども、京の方が人が多いのかもしれない。

「そういえば、こんな風に平助君と巡察に出るのも久し振りだね」
「そういえば、そうだね。本当に久しぶり」
「ん?ああ、そうかもな。オレ、長いこと江戸に行ってたし。オレの留守中、どうだった?新八っつぁんとか左之さんにいじめられたりしなかったか?」
「大丈夫。皆、気を遣ってくれたから」
「……たまに、沖田さんが意地悪してくることはあったかな」
「……そっか。ならいいけど……いや、よくねえか。総司の奴は相変わらずだなあ……。あ、親父さんの行方は、どうなんだ?手掛かりとか、見つかったか?」

その言葉に、私と千鶴は思わず沈んだ表情をしてしまった。

「それが、全然……」
「古高俊太郎の時の情報から、一つも……」
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