第5章 デートくらい出来ます
それはただの嫌がらせだった。
勝手に離れていこうとするしずくへの。
そんな事になる前に、きっと離婚する事になるだろう。
そう分かっていても、今さら離婚を突き付けるしずくへの小さな怒りが悟にそんな提案をさせた。
「……いいの?僕が勝ったらしずくは一生恋愛は出来ないよ?好きな人が出来てもそいつは愛人のままだ。」
「そうね……。」
でもきっとそうなった時は、悟は別れてくれるだろう。
こんな事をわざわざ聞いてくる悟の表情にそんな事を思った。
きっともう悟は離婚する事を受け入れている。
ただ、もう少し気持ちを落ち着かせる時間が必要なんだと。
そう思った。
「…しずく…。」
スッと悟の手が伸びて、しずくの腕に触れた。
「やっぱり、今日は抱いていい?」
離婚する前に少しだけしずくの温もりを覚えておこうとしているのか。
何故今無性にしずくを抱きたいのか、悟は分からなかった。