第11章 この最低男
息をかけないで。
わざとらしい悟の仕草にイラッとするのに、いちいち反応する自分の体の方がしんどい。
「全然積極的じゃ無いし、つまらないんだよね。」
サッと顔を離して悟は言った。
「離婚するまでまだあるんだから、楽しませてよ。」
悟は片手でしずくの体を術式で引き寄せると、そのまま自分の部屋に向かう。
そしてベットにしずくを置くと、あの時の手錠を取り出した。
「っ悟!」
すぐに両手を拘束されて、ベットサイドに手錠を固定される。
ブァッと悟の匂いが部屋中からして、血が上った頭でこの状況を考える。
「さて…、今日はどうかな…。」
情欲の中に、目の前のおもちゃをどうしようかと粘る視線が入っている。
(この人はただ私を粘って楽しみたいだけだ。)
反応したら、悟の思いのツボなのに、虚しさと羞恥心で涙が出た。
「…しずく…泣き落としは飽きた。」
うんざりした様な顔で悟はため息を吐きながら言った。