第10章 これは愛ではありません
「……おかえりなさい…。」
「ただ今。」
離婚の話をしてから、悟は帰ってくると、しずくの部屋まで来る様になった。
今まではリビングに居なかったら、わざわざ部屋まで来て声を掛ける事は無い。
「…ご飯は?」
「…いる。」
そして仙台から帰って来てからは、更に悟はしずくとの時間を過ごそうとする。
サッと夕飯の用意をして、リビングにから出ようとすると、悟がしずくの手を取る。
「1人じゃ寂しいから、しずくも食べ終わるまで居てよ。」
決して今まで言わなかった言葉を掛けながら、悟は笑顔でしずくに言った。
まるで普通の夫婦の様に振る舞う。
妻を愛している旦那を演じながら、悟はしずくを試していた。
しずくが悟を好きになるかどうか。
悟に言われて目の前の椅子に座ると、しずくは特に表情の変化は無く悟を見ている。
「今日何処か行った?」
「……別に…。」
「……嘘付け…。」