第9章 とても変な夫婦関係です
来た道を歩いているだけなのに、悟は庭園に目をやった。
「しずく、ライトアップされて綺麗だよ。」
悟の言葉で俯いていた顔を上げて、庭園を見た。
「少し散歩して戻ろうか。」
先に庭園に出る悟の後ろ姿を見ながら、しずくは後を付いて行った。
しばらく無言で歩いていると、後ろからしずくの声が聞こえた。
「悟…『夫婦ごっこ』は楽しい?」
「……そうでも無い。」
目の前に行きに見た大きな柳の木が、綺麗にライトアップされていた。
思わずその光景に悟は足を止めた。
「でも……しずくと散歩するのは悪くない…。」
悟の言葉にしずくの足も止まった。
夫婦でも、そうで無くても、こうして一緒に歩くのは、もうしずく以外考えられなくなっていた。
空気の様な存在。
その言葉通りに、当たり前のようにそばにあって、当たり前の様に必要なモノだ。