第9章 とても変な夫婦関係です
「……何て顔してるの……。」
自分の肩の上で、凄く顔を顰めている悟に、しずくは眉間に皺を寄せて聞いた。
「……いや…僕の記憶に間違いが無いか探してる最中…。」
「?」
悟の意味の分からない言葉に、しずくは更に不信感を募らせる顔をする。
自分で今思い返しても、結婚式と初夜にろくな思い出が無い。
この10年を思い返しても、しずくの離婚を引き止められる様な、そんな思い出は一個も無かった。
いや、今更一個見たかった所で、何かが変わるレベルでは無い。
「……悟…のぼせてきた…。」
しずくはもう上がりたそうだ。
このまま引き止めても、しずくが嫌な思いをするだけだろう。
そう思って悟は抱き締めていた腕を離した。
悟の腕が解かれると、しずくはさっさと湯船から出て行く。
本当にこの女は、言われたから着いてきただけの様だ。