第1章 Episode 01
「おい、またあの女俺らの訓練を見にきてるぞ」
「....大方、俺達の監視っていうところか」
リヴァイ達が調査兵団の内情を探る中で、いくらかわかったことがある。エミリー・ハワード、常にエルヴィンの側に控えおり、地下街での任務にも参加していたあの女兵士。彼女はどうやら分隊長であるエルヴィン・スミスの補佐官を長年務めているらしく、兵団の中であの男に最も近しい人物だ。
リヴァイ達はロヴォフの不正証拠を見つける為にエルヴィンの周辺を探る上で、最初こそ彼女を利用することを考えていた。しかしそれもどうやら難しいらしい。エルヴィンの命令か自身の判断なのかは定かでは無いが、彼女はこちらの動きをずっと探っている。暇があれば訓練の様子や兵舎内でのリヴァイ達の活動の様子を見にきており、彼女の目が届く範囲では下手な真似をする事はできない。正直ここ数日はエルヴィンよりも疎ましい存在だとさえ思えてきている。
「チッ...気持ち悪ぃ」
エミリーという女は地下街にいたどの女達とも違う。兵団内ではそれなりに人間関係も築いているようで、エルヴィンよりもよく人と話す。それも上官と部下を問わず、リヴァイ達を監視しに訓練に顔を出す合間にも若手兵士にも上手く声をかけている。男の兵士の中には彼女に憧れる者も少なからずいるようで、しかし恋人がいるとの噂はまるで聞かない。賢く、それでいて男の力などにはまず降らないであろう油断ならない相手である。エルヴィンを殺すならまず、側にいるあの女もどうにかしなければならない。
「_今夜、またやるぞ。まぁ部屋にそれらしい書類を置いている様子じゃないけど」
「あぁ、わかってる」