第1章 Episode 01
「あの時はごめんなさい。壁外で取り乱すなんて、どうかしてた。....仲間をまた、危険に晒す所だった」
「周りはさほど気にしてはいない。小さなことで、あまり自分を責めすぎるな」
「リヴァイは、気づいてた。....怖いの。いつか私のせいでまた、大切な人を失ってしまう」
「それは_ 」
「少なくともあの時冷静さを失った時点で、私は兵士として失格よ」
「....」
エミリーはエルヴィンから顔を背け、そう答えた。エルヴィンはエミリーにそれ以上かける言葉が見つからないまま、彼女の手を取り握ることしかできない。
「....俺も、あの時は悪かった。君にはいつも酷な事ばかりをさせるな」
「貴方は上官として私の不手際を正しただけ。謝ることじゃないわ」
「今回の件だけじゃない。損な役回りであっても、君だけは俺の決断にいつも付いてきてくれる」
その言葉にエミリーは、先のファーランとイザベルの死を思い浮かべた。例えどれだけ冷酷に仲間を騙すことがあろうとも、エミリーはエルヴィンのことを裏切らない。それが人類にとって正しい道と信じているから。
「貴方の命令が無ければ、私は兵士ではなくなってしまう。....それに、あの日の約束を忘れた訳じゃない」
「....エミリー、こっちを見てくれ」
エルヴィンの問いかけに、エミリーは大人しく顔を上げて彼の方を仰ぎ見る。僅かに熱の籠った碧い瞳が、エミリーの胸を揺り動かす。いつのまにか彼女の手を包んでいた男の手は、彼女の頬へと寄せられていた。
「エミリー....」
「エルヴィン、ん..._ 」
何度も交わした、甘い唇の触感。二人の悲しい夜が訪れる度に、気持ちよりも先に互いの身体を求めてしまう。触れ合う場所は外から内へと、次第に変化していく。
「_....はぁっ...」
「っ....エルヴィン....」
「....今夜は、一緒に過ごそうか」
「...っうん」
悪夢に苦しむくらいなら、熱に溺れて何もかも忘れてしまう方が彼女にとっては楽だった。息が出来ない程の熱ににうなされ、男の胸に縋り付きながら、深い夜を共に過ごすのであった。