第1章 Episode 01
華やかな貴人が行き交い、賑やかな街並みが続く王都ミッテラン。三重の壁の内側に守られたそこは、この世界で最も幸せな人々が暮らす場所だ。しかしその地下深くには、全く違った景色が広がっている。陽の光が届かない閉ざされた天井に、ネズミが駆け回る路地の裏通り。地下街で暮らす人々は皆貧しく、泥水をすすって生きている。裏切りと搾取が蔓延るその世界で自由を手に入れることが出来るのは、よほど神に愛された運の持ち主だけである。
無法地帯と化した地下街へは、憲兵達も足を踏み入れたがらない。地下商人達は腐敗と汚職を繰り返し、王政から送られた街への支援物資さえ横流しは日常茶飯事だ。そんな彼らの積荷が滅茶苦茶にされるくらい、誰もが当然の報いだと考えるだろう。
"ドカーン!!!"
_「クソッ、やられた。またあいつらだ...!!」
_「誰か!憲兵団を呼んでくれ!」
_「いいぞぉー!もっとやれー!」
薄暗く、地上に蓋された地下街の空を自由に飛び回る3人の影。狭い建造物の間をすり抜け宙を舞うその姿は、まるで翼が生えた鳥のようだ。その姿を見た者は誰もがあんな風に自由になりたい、そう思うだろう。
「リヴァイ、追手だ。奴ら今日はずいぶん少数だな」
「自由に生きたい」そんな彼らを邪魔しようとする者達もいる。腐った奴らは腐った奴らと友達なのだ。地下商人にせっつかれた憲兵たちは重い腰を上げ、ここ数日間立体機動装置を使い逃げ回るゴロツキを追っている。しかし壁の内側で怠けた彼らは狭い地下街を飛び回る事なんてできやしない。しかしこの日はなぜだか違っていた。
「フッ、懲りない連中だぜ....兄貴!今の台詞カッコよくね!?」
「馬鹿か。自由の翼の紋章をつけている、奴ら調査兵団だ。...こうなりゃ面倒くせえが仕方ねぇ。イザベル、ファーラン、やる事はわかってるな。...いくぞ!!」
「「おう!!」」