第2章 #01―マリーゴールド―
言い終わる前に掴まれるお兄ちゃん
「イヤだ!お兄ちゃんを離せッ!この!この!」
近くに行けない。さっきのお姉さんが私を抱き上げている。
リコ(巨人をそぐのは間に合わない。せめてこの子だけでも!)
「いやだ!お願いします!お兄ちゃんがまだ!」
巨人が大口を開けている
「ダメダメダメダメ!嫌だ嫌だ!あ――」
腰から下を噛み切られるお兄ちゃん。
「イヤア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
降り注いぐ血の雨。頭上からお兄ちゃんがいつも着けていたネックレスが落ちてきた。せめてもの思いで手を伸ばし掴む。
あぁ。どうして?私達が何をしたって言うの?
優しいお兄ちゃんはどうして?
どんどんと離れていく場所をただ呆然と見つめていた。
しばらく走ってお姉さんは私をおろしてくれた。
リコ「私は、リコ・ブレチェンスカ。君の名前は?」
「ねぇどうして……?」
自分でも驚く程抑揚のない冷たい声。
今誰が喋っているのだろうか、分からない。どうでもいい。
「お姉さんは兵隊さんなんだよね……?どうしてお兄ちゃんを助けてくれなかったのですか?」
リコ「……。あの場で1番最善の行動は君を抱えてあの場を離れること。君のお兄さんもそれを望んでいた。」
「……。」
リコ「無理もない。名前は?」
「カリン……。カリン・ヴァイオレット」
リコ「カリンちゃん。君を船着場まで安全に連れていくことを約束するよ。」
お姉さんは白髪で、メガネをかけていて、お兄ちゃんに似てるな……。
あれ?……どうして私は生きているんだろう……。
でももうどうでもいいか。
全部全部どうでもいい。
この世界はとても残酷だ、そして酷く穢らわしい。
―――――その日人類は思い出した
――――奴らに支配されていた恐怖を
――――鳥籠の中に囚われた屈辱を
マリーゴールド
花言葉¦絶望、悲嘆、悲しみ
¦勇者、健康、変わらぬ愛