第52章 神戸コンチェルト
別のプランの方が良いかなって思ったのと
あぶく銭を使うのが目的なので
コースをアップグレードしてくれたらしい。
赤のグラスワインを注文して、
チンと…グラスを鳴らして乾杯をして。
前の…あの時とは同じ窓際の席だけど
座って居た場所は違うので。
前の時の…テーブルの方を見ていると。
『前に来た時は…、
あそこのテーブルでしたよね?』
私の視線の先に気付いた彼が
私にそう声を掛けて来て。
『今度は…ルミナス神戸2
にでも乗りませんか?』
一時期運休してた期間があったけど
今は期間限定運航で、
ルミナス神戸でのランチや
ディナーを楽しむことが出来るみたいだ。
『2月に…運航してたみたいなんですけど
次はGWに…運航するみたいですね』
そんな話をしていると、
季節のオードブルの盛り合わせが
テーブルの所に運ばれて来て。
この…今乗っているコンチェルトは
毎日運航してるから、
ルミナス神戸2も…毎日
運航してるとばかり思ってたけど。
オードブルの後には、
淡路島産玉ねぎを使用した
オニオングラタンスープ。
その次には、
オマール海老と白身魚のポワレ
カラスミの入ったソースと共にが
テーブルの所に届けられる。
その頃には…夕陽が沈んで
すっかり…夜の神戸の姿になっていて。
『トワイライトクルーズは
明るい時間の景色も
夜の景色も楽しめて
1回のクルーズで、
窓からの景色も2度美味しいですよね』
その頃にはグラスが空になって
別の種類のグラスワインをお願いして。
今回…彼が予約してくれたのは
神戸牛のコースで。
メインのお料理は、
神戸牛のポワレ 赤ワインソース
セロリラブとトリュフを添えてなんだけど。
神戸牛なんだから…お味は間違いない訳で。
メインの後は…彼はコーヒーと
私はお紅茶と一緒にデザートを頂いて。
あの時と…同じ様に…、
すっかり夜の顔の神戸を観る事ができる
デッキに彼と一緒に向かった。
あの時に…彼と…初めて
ここでキス…したなって思い出して。
キス…したいなって思って居ると。
『巴さん』
声が上から降って来て、
顔を上げると
自分の唇にキスが降って来た。