第20章 2人の年越し
はい、どうぞ…と
彼が言いながらこっちに
口を縛ったコンドームを差し出して来るから。
思わず…手を出して受け取ってしまったけど。
今…私の手の上にある面って
私の中に入ってた方…側…。
と…何とも言えない気分になりつつ。
黒いコンドームじゃ…
中の精液の色なんて
黒の色に邪魔されて見えないけど。
無色透明のゴムなので。
その…色が…ハッキリと見えていて。
ゴムの上からもにゅもにゅと
先端に溜まっている精液を揉んで
その……ゴムの薄さの向こうに
溜っている液体が冷えて行くのが
自分の指に感覚として伝わって来て。
「あれ…?」
『巴さん…どうかしたんですか?』
「色…透明になってない?」
中に溜まって居た精液が
色が抜けてしまったみたいに
今は透明になってしまっていて。
さっき、彼に渡して貰った時
白かったはずなのに…??
『ああ、何か…出した後
何分か経ったらそうなりますよ?』
し、知らなかった…。
精液って白いって思ってたから。
時間が経ったら透明になるんだ…。
私が不思議そうにしてたからなのか
精液が透明になる理由…と
彼が音声検索してくれて。
この出した後の精液が透明になるのは、
”液状化”と呼ばれる現象で。
大体…早い人だと5分、
10分位から液状化が始まって。
30分以内には…液状化が完了するらしい。
これが起こらないのが男性不妊の
原因になる…のだそうだ…。
『出した直後の精液はネバネバして
粘調な性状らしいですけど、
このネバネバのままだと、
精子が上手く動けないと言うか…
泳げないらしいですよ?』
……と言う事は…、
液状化するのが…早いって
言う事…になるよね?
液状化するのが…早いって事は…、
その…つまり…そう言う事…だよね?
『じゃあ、僕のは…
ちゃんと液状化が出来てるって
事ですよね?巴さん…』
私が彼からこれを受け取って、
時間的には10分も…
終わってから経ってないから。
いや…何と言うか…
若いからとか…そんなんじゃなくて。
彼のは…元気そうだし
沢山居そうだなって……。
そんな事を考えていて。
ゴォオオ――――ン!