第17章 彼と私のクリスマス
『考えるなとかって言ったとしても、
巴さんが
それを考えてしまって、
心を悩ませるのは…、
1年後も…10年後も…
変わらないと思うんですよ…でも…』
港斗が目を巴の方に向けて来て、
そのまっ直ぐな視線を感じる。
逸らしたくなりつつも、
自分からも彼の目を見つめ返した。
『前に巴さん、
言ってたじゃないですか。
10年後は僕は34だけど
自分は46だって。
20年後は、僕が44で自分は、
その頃になったら56なんだって。
でも巴さん考えて下さいよ、
それが60年後とかなら…どうですか?』
「えっ…、60…年後??」
今は彼が24で私が36なのだから。
単純計算すれば、60年後は。
彼が、84で、私が96になるけど。
「は、84と…96…だけど…
でっ…でも…その頃には…その…」
もしかしたら…生きてない…
可能性だって…大いにある。
『もう、その年齢になっちゃったら
何才だろうが、僕はおじいちゃんで
巴さんも
おばあちゃんになりますから。
年齢差なんて、関係なくなりますよ』
ね?と言って彼が笑って居て。
『それに…、平均寿命だって
男性より女性の方が長いですし。
確か、男性が81で、
女性が87位ですから。
もう、6歳以上は、差がある方が
全然良いですって。
もう、その年になったら
誰も何も…言ったりしませんって』
私がおばさんになっても…
なんてそんな歌があったけど。
私が…おばあちゃんになる頃には、
自分もおじいちゃんだから
年齢差なんて問題ないと言われてしまって。
『それに…僕は、
巴さんは、
巴さんだって…
そう思ってますから…。
巴さんは巴さんですし、
僕は僕ですよ?それで…
良いんじゃないかなって……』
それ以上でも、それ以下でもない…。
私は私で、自分は自分なんだ…と。
そう…彼に言われてしまって。
「う…うん…」
上手く自分の感情を…
言葉に乗せる事が出来ずに。
ただ…彼のその言葉に首を縦に振って。
ぎゅう…と…彼に抱きついた。
『巴さん…
ベッド…行きましょうか?』
彼の身体に抱きついて居る
私の耳元で、彼がそう問いかけて来て。
彼のその言葉に、
私はそのままの体勢で頷いた。