第5章 芸術の秋…とかしてみたり
隠しきれずに、手から
はみ出している部分が、
真っ赤に染まって居て、
年齢は確かに僕より
12歳年上の36歳なのだろうが。
『恥ずかしがってる巴さんは、
可愛いですもんね、可愛いなぁ…』
「やっ…、言わないでって
今、言ったのにぃい、
港斗君の馬鹿ぁ…ッ」
だからついついこっちも
そのリアクションを期待して
可愛い可愛いって言ってしまうし。
巴さんの反応が可愛いんだから
余計に可愛いと言いたくなってしまう。
スルッ…と港斗の指先が
巴の唇をなぞって来て、
ギュッと…指で唇を押して。
圧を掛けて来る。
「み、…港斗…君?…どうしたの…?」
『いえ…、…何でも…無いんですが。
巴さんの…
今日の、その唇みたいな色をした
コスモスをさっき見ましたよ』
「もしかして、それって
チョコレートコスモスの事?」
『ああ、確かにチョコ…みたいな
そんな色してましたけどね』
「匂いも…チョコみたいな
甘い香りがする…らしいけど…」
『チョコみたいな匂いするんですか?
ちょっと探しましょう、匂い
本当にチョコか、確かめてみたいので…』
『チョコレートコスモスなら、
あっちにありますよ』
そう後ろから声をかけられて
巴と港斗が振り向くと。
この地域の人らしい人が立っていて。
チョコレートコスモスがある場所を
この美咲地区の人に教えて貰って、
チョコレートコスモスが
咲いている場所に向かう。
「わぁ…あった、これが
チョコレートコスモス…」
港斗君が、私の唇の色と
表現をした様に、深みのある
茶色味を帯びた赤色をしていて。
チョコみたいな匂いと期待して
匂いを嗅いでみるが、
思ったほど…普通にお花の香りがして
チョコって言われると
首を傾げる感じだったが。
珍しい色をしたコスモスの花を
数枚自分のスマートフォンに納めた。
元来た道を…手を繋ぎながら
歩いて引き返して行く。
駐車場に戻るまでにある、
ある1軒の民家の前で
地元のおばちゃん達が数人。
大きな鍋でおしるこを売って居て。
『お汁粉どうですか?巴さん』
「うん、ちょっと肌寒いし
お汁粉飲んで一息つきたいな」
『すいません、お汁粉2つ下さい』
『はい、毎度。お汁粉2つね』
使い捨てのお椀に
お汁粉を入れて貰って。