第5章 芸術の秋…とかしてみたり
『ようこそ、
いらっしゃいませ。
どうぞ、こちら
美咲地区の地図です』
そう言って声を掛けてくれたのは
高校生ぐらいの男の子で。
手書きのこの地区の地図が
印刷された案内マップを
観光客に配っている様だった。
その手書きの地図には、
休憩できるベンチが
設置されている場所や、
フォトスポット、出店がある場所や。
おトイレを貸してくれる場所。
お食事が楽しめる場所などが書いてある。
駐車場の所には募金箱が設置されていて。
この地区でのコスモス祭りを
この先も続けて行けるように
料金として徴収するのではなく、
お気持ちを納めて貰う形を
取っている様だった。
貰った地図を頼りにして、
ぐるっとコスモスを楽しみながら。
その美咲地区を巡る。
「何か不思議な感じ…、
普通にお家がある隣を、
こんな風に歩かせて貰ってるとか…」
『そうですね…、
ああ、見て下さいよ
ほら、巴さん、
あそこのコスモス真っ白ですね…』
白いコスモスの畑の前で、
港斗が写真を撮りましょうと言って来て。
『白いコスモス…、
巴さんにピッタリですよ』
ニコニコといつもの笑顔で
笑いながら、白いコスモスが
私に似合うと言われてしまって。
どうにも…、恥ずかしい感じがする。
港斗に、数枚。
白いコスモスを背景にして
写真を撮られて。
「あ、だったら…港斗君には
あっちが似合いそうかも…」
そう言って少し先にある、
オレンジ色のコスモス畑を
巴が指さして。
『オレンジ色のコスモス・花言葉』
自分のスマートフォンの音声検索で
オレンジのコスモスの花言葉を
港斗が調べていた様で。
ちょっとムッ…とした顔を、
いつも穏やかでニコニコしてる彼が
珍しくしたと思ったら、その後
嬉しそうな顔をしていたので。
それが気になってしまって、
こっそり自分のスマートフォンで
巴が、オレンジの
コスモスの花言葉を検索すると。
一番最初に…
”幼い恋心”と言うのが出て来て。
私が年齢差を理由にして、
最初の頃交際を断ったから…
彼も気にしてるのかと
内心ハラハラしてしまった
巴だったのだが。
そのまま、検索した結果を
更に下へと、スクロールすると。
”野性的な美”と言う
花言葉が出て来て。