第77章 梅雨は紫陽花
目的地に向かっている
車内でも…気になってる様子で。
巴はあの後あそこに残して来た、
2人の事を何度も話題にしていて。
LINEを気にしてる感じで
自分のスマートフォンをチェックしていたけど。
まぁ…ふたりで居るんだから
LINEは…返って来ないだろうけど。
『LINEが来てないって事は
まだ一緒にいるって事ですよ?巴さん』
「たっ…確かに…、えっとあそこって
何時まで…ロープウエイ動いてるの?」
『えっと確か、20時過ぎ位ですよ?
だからそろそろ…あの2人も
上から降りて来てる頃でしょうけど?』
ロープウエイの営業は20時15分までで
もう…その時間を過ぎてたんだけど。
『真っ暗でしょうけど、
最悪歩いても降りて来れますよ?』
「昼間ならそんなデートも
健康的でいいかも知れないけど…」
私達が…新神戸駅の近くの駐車場から
明石舞子藩台場跡に着いた頃には
時刻は20時30分を回っていて。
明石海峡大橋を…誰にも邪魔されずに
ふたりでしばらく…ライトアップされた
明石海峡大橋を眺める。
この近くには明石海峡大橋を
眺められるスポットには
舞子公園とか大蔵海岸とか
アジュール舞子とかがあるから。
そっちの方がカップルで
橋を眺めるのに雰囲気がいいし
ここから見ようと言う人は居ないから
静かに2人だけで楽しめる。
『さて…、そろそろ…帰りましょうか?』
「うん、そうだね。まだ
ふたりから何にも報告もないし…
帰ろうか?港斗君…」
その場から離れて車に戻って、
自分達が同棲している
明石のテラスハウスに戻って来る。
お湯張りをしながら、何時もの様に
コーヒーを用意して彼の所に持って行くと
彼が特注のカウチソファの上で
スマートフォンを弄っていて。
その顔が緩んでる感じだったので。
「あ、もしかしてっ…報告あったの?」
『ええ、ありましたよ…。
今度の休みに一緒に
布引ハーブ園にデートに行くって
そんな話になってるみたいです』
一緒にデートと聞いて
今までみたいなお出掛けじゃなくて
恋人同士のデートだって分かったんだけど。
自分のスマートフォンのLINEを見ると
葵ちゃんからお礼のスタンプが届いていて。
2人はあの後、上手く行ったみたいだった。