第2章 捨てましょう、自己嫌悪感なんて ※微
先生が家を空けると言ってから半年が経った。最初はうまく話せなかった弔くんとも、くだらない言い争いができるほどに?距離は縮まっていた。
そしてあれからすぐ家には''黒霧''という頭が黒いモヤで覆われた男の人が来て、私と弔くんのお世話をしてくれている。
黒霧はとても優しい。
私と弔くんに色々な事を教えてくれた。...っていっても弔くんは「めんどくさい」と言っていつもゲームをやっていたけど...。
ある日、機会に恵まれなかった私に黒霧が文字の読み書きを教えてくれた。
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『んん...黒霧ぃ...疲れたよぉ...』
「、''の''が逆になってますよ。反時計回りじゃなくて、時計回りです。」
リビングのテーブルで突っ伏した私の隣に座ってた黒霧が覗き込んできて、優しい声で間違いを指摘してくる。
『うぅ...文字って難しいなぁ...』
私の周りには失敗して丸めた紙くずが幾つも転がっていた。
鉛筆を持っている指が痛い。学校に通ってる自分と同じくらいの子は毎日こうしてる、と思うと素直にすごいと思った。
「そうですね。でも生きていく上で大事な事です。それに先生に手紙、書くんでしょう?」
黒霧が私が投げ捨てた紙くずたちを拾い上げながら言う。
『うん...。でもさ、黒霧の個性はワープでしょ?そのワープで先生のところに連れてってくれないの?』
「ええ。確かに私の個性はワープです。ですが任意の場所に出現させるためには正確な位置座標の情報が必要となります。私は先生の居場所を知らされておりませんので...。お力添えできず申し訳ございません。」
『そうなんだ。』
普段感情の読み取れない黒霧の顔だが、金色の怪光な瞳がいつもより遠慮気味に感じてそれ以上は言わなかった。
「黒霧ー、勉強なんか辞めて俺とゲームやろう」
隣の部屋から来た弔くんが、ゲーム機をもって私たちのところに来た。
『弔くん、黒霧は私と一緒に勉強してるの!』
「俺だって黒霧と遊びたい。それに黒霧だって勉強ばっか可哀想だよ。」
「、死柄木弔、喧嘩はダメです。」
一触即発な私と弔くんに黒霧が間に入って喧嘩を止めてくれるのもまた、この人の役目だった。