第10章 【安室 透】聖夜の誓い
キラキラと輝くイルミネーションに
つい口ずさんでしまうリズミカルなBGM。
街はクリスマス一色に染まっていて。
周りを見渡せば
身を寄せて幸せそうに微笑むカップルで溢れかえっている。
本当だったら私も・・・
彼と楽しいクリスマスを過ごすはずだった。
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「え・・・クリスマス、会えないんですか?」
「すみません、探偵の仕事が入ってしまって・・・。
デート、23日にしてもらっても良いですか?」
仕事なら仕方ない。
「私と仕事、どっちが大事なの!?」と駄々をこねるほど子どもではない、けど・・・
「大丈夫だよ、頑張ってね!」と笑顔で送り出せるほど大人でもない。
安室さんと付き合って初めてのクリスマス。
2ヶ月前からデートスポットやプレゼントをワクワクしながら考えていた。
約束していたのに仕事を入れるなんて・・・
彼にとって私と過ごすクリスマスは、そこまで重要な日ではないのかと醜い感情が芽生えてしまう。
それとも・・・仕事というのは口実で、他に好きな人がいる、とか・・・。
2日前、蘭ちゃんと梓さんの会話を聞いてしまった。
「さっき、安室さんと女の人が腕を組んで歩いてるのを見たんですけど・・・」
「私、昨日見ました!最近ポアロでも嬉しそうな顔をしてるし・・・。
安室さんに限ってまさか・・・ですよね?」
安室さんが浮気・・・?
まさか・・・だよ。そんなの。
みんなに優しくてアイドル並みに人気な彼。
たくさんの女性の中で私を選んでくれた。
それだけで嬉しかったのに・・・。
独り占めしたい。他の人に触れてほしくない。
独占欲が沸いているのに彼に本音を伝えられないでいる。
伝えて離れていってしまうのを恐れて・・・。
結局、23日のデートを断ってしまったのでしばらく会えなくなり。
つくづく自分は面倒な女だな・・・と溜息をついた。